量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part11

こんにちは。Kumaです。

最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
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量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社

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今回はpp.41- です。

pp.41-1,2,3,4 ユニバーサル量子計算(解答募集中...)

pp.42-1 混合状態



 \begin{eqnarray*}
 &\rho& \equiv \sum \lambda_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | \\
 &\lambda_{i}& \geq 0 \\
 &\sum& \lambda_{i} = 1
 \end{eqnarray*}
はトレース1の非負エルミート演算子であることを示せ。
を示せ。
ここに、エルミートであるとは  A^{\dagger} = Aである。
また非負であるとは固有値のすべてが非負であることをいう。

  • 解答

1. エルミート性


 \begin{eqnarray*}
 \rho^{\dagger} &=& \sum \lambda^{*}_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | 
 \end{eqnarray*}
ここで \lambda_{i}は実数であるから、 \lambda^{*}_{i} = \lambda_{i} よって  \rho^{\dagger} = \rho

2. 非負であること

qiita.com

を参考に。

 \rho固有ベクトル | \psi \rangle 、対応する固有値 aとおく。固有ベクトルは規格化されているとする。

 \begin{eqnarray*}
 a &=& a \langle \psi | \psi \rangle \\
 &=& \langle \psi | a | \psi \rangle \\
&=& \langle \psi | \rho | \psi \rangle \\
&=& \langle \psi | (\sum \lambda^{*}_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | )| \psi \rangle \\
&=& \sum \lambda_{i} \langle \psi | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | \psi \rangle \\
&=&  \sum \lambda_{i} | \langle \psi | \phi_{i} \rangle | ^{2} \\
&\geq& 0
 \end{eqnarray*}
となり示された。

注意点

  • 混合状態と純粋状態の違い

純粋状態の場合は直交する状態の量子的な(複素係数の)重ね合わせであった。
しかし混合状態の場合は、任意の状態の確率的な(非負実数係数の)和である。
すなわち混合状態の定義に出てくる  | \phi_{i} \rangle たちは一般に直交する状態とは限らない。
*1
例えば、  | 0 \rangle,  | 1 \rangle, | + \rangle, | - \rangle を等確率で混合した状態を考えても良い。
 \rho = \frac{1}{4} | 0 \rangle \langle 0 | + \frac{1}{4}  | 1 \rangle \langle 1 |  + \frac{1}{4}  | + \rangle \langle + |  + \frac{1}{4}  | - \rangle \langle - |

混合状態 は 散々注意したように 重ね合わせ とは異なる。混合状態において、実は状態は  | 0 \rangle,  | 1 \rangle, | + \rangle, | - \rangle のどれか1つに確定しているのであるが、情報不足によって我々はどの状態であるかを「知らない」(あるいは「実用上知ることが著しく困難であり、統計的に扱うほかに手がない」)だけである。

  • 混合状態がなぜ必要か

例えばアボガドロ数程度の粒子の古典的な力学系を考えよう。
このとき、確かに個々の粒子の位置,運動量,その後の時間発展などはニュートン力学だけで決定的である。
しかし粒子同士の相互作用を含めてこれを計算したり測定することは極めて難しい。*2
そのため、実用的にはXXのパラメータを持つ粒子が平均でYY%存在する として、粒子全体に渡る平均(期待値)を追いかける他にない。
(これが量子力学的な重ね合わせ状態なんて意味していないことは明らかである)
これが古典統計力学のアイデアであり、混合状態はまさにこのような事情で必要とされる。(と私は理解している)

今回はここまで。

*1:ただし  \rho はエルミート演算子であることから、(一般には | \phi_{i} \rangleとは異なる) 直交する固有ベクトル | \psi_{i} \rangle を持つ。 この固有ベクトルを用いて改めて分解することは可能である。  \rho =  \sum \Lambda_{i} | \psi_{i} \rangle \langle \psi_{i} | (スペクトル分解)

*2:そして、これが出来たとしても系についてなにか わかった とは到底思えないわけである

(箸休め) 量子計算について学んでみたいこと

こんにちは。Kumaです。

番外編として、量子計算について私が学んでみたい課題について書いてみます。
つまり「XXの理解を目指して、やってます」ということですね。
知りたいことはいっぱいあるのですが、基本素人スタートなので先は長そうです。

量子計算の速さ

  • 量子計算は"なぜ(Why)"速いのか

重ね合わせやエンタングルメントがポイントなことには違いないが、それが「どこに」「どれぐらい」効いているかはアルゴリズム次第

  • 量子計算は"どう(How)"速いのか

速い ってなんだろう。Groverのアルゴリズムは”速い”だろうが、オラクルがないと実行不能という意味で工学者にとっては”速い”とは言い難い

  • 量子計算に出来ないことはなんなのか

量子計算HWの実装

  • HWに求められる要件はなんなのか。

スケーラビリティ、量子誤りの低さ、計算可能時間etc ?

  • 分散型量子計算の可能性。何が必要か。

おそらく一度に大規模な量子ビットのHWを作るのはきついので、マルチコアっぽく複数の小規模な量子ビットのHWを作って並列計算させるほうが良いはず

量子誤り訂正符号

  • 古典符号との設計や仕組みの違い

量子情報と古典情報の違いはかなり効くのでは? 例えばスタビライズされているものしか使えない?とか。
噂ではFEC閾値(ウォーターフォールするFEC前BER)を下げるのが大変らしい。
(他方、古典符号だと 10^{-2}のBERでウォーターフォールを起こさせることは現代では容易)

  • 量子シャノンリミット

何らかの意味で”量子化”された相互情報量がやはり限界なのか。違うのか。

  • 何が”良い”量子符号なのか

古典符号ならば シャノン限界への近さ、符号長、復号の計算量 etc

  • 古典の”良い符号”の量子化も”良い”符号なのか

例えばリードソロモン、ターボ畳み込み符号、LDPC、Polarの量子化は”良い符号”なのか

量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part10

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今回はpp.40- です。

pp.40 クリフォード演算子(2)



 \begin{eqnarray*}
 &(&1) R_{\frac{\pi}{4}} X R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}} = \frac{X+Y}{2} = e^{-i \frac{\pi}{4} } R_{\frac{\pi}{2}} X \\
 &(&2) R_{\frac{\pi}{4}} Y R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}} = \frac{-X+Y}{2} = e^{-i \frac{\pi}{4} } R_{\frac{\pi}{2}} Y \\
 &(&3) R_{\frac{\pi}{4}} Z R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}} = Z
 \end{eqnarray*}
を示せ。
ここに

 \begin{eqnarray*}
 X &=& | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | \\
 Y &=& i | 1 \rangle \langle 0 | -i  | 0 \rangle \langle 1 | \\
 Z &=& | 0 \rangle \langle 0 | -  | 1 \rangle \langle 1 | \\
 R_{\frac{\pi}{4}} &=&  | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{j \frac{\pi}{4}} | 1 \rangle \langle 1 |  \\
 \end{eqnarray*}
である。

  • 解答


 \begin{eqnarray*}
 R_{\frac{\pi}{4}}(  X R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}}  ) &=&  R_{\frac{\pi}{4}}( | 0 \rangle \langle 1 | +  | 1 \rangle \langle 0 | )( | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{-i \frac{\pi}{4}} | 1 \rangle \langle 1 | ) \\
&=& R_{\frac{\pi}{4}} (e^{-i \frac{\pi}{4}} | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 |) \\
&=& (| 0 \rangle \langle 0 | +  e^{i \frac{\pi}{4}} | 1 \rangle \langle 1 | ) (e^{-i \frac{\pi}{4}} | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 |) \\
&=& e^{-i \frac{\pi}{4}}| 0 \rangle \langle 1 | + e^{i \frac{\pi}{4}}| 1 \rangle \langle 0 | \\
&=& ( \frac{1}{\sqrt{2}} - i \frac{1}{\sqrt{2}} ) | 0 \rangle \langle 1 | + ( \frac{1}{\sqrt{2}} + i \frac{1}{\sqrt{2}} ) | 1 \rangle \langle 0 | \\ 
&=& \frac{1}{\sqrt{2}}( | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 |  ) + \frac{1}{\sqrt{2}}( i | 1 \rangle \langle 0 | - i | 0 \rangle \langle 1 |  ) \\
&=&  \frac{X+Y}{2} 
 \end{eqnarray*}
となり第一の等式が示された。第二の等式については以下の通り。


 \begin{eqnarray*}
 R_{\frac{\pi}{4}}(  X R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}}  ) &=&  R_{\frac{\pi}{4}}( | 0 \rangle \langle 1 | +  | 1 \rangle \langle 0 | )( | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{-i \frac{\pi}{4}} | 1 \rangle \langle 1 | ) \\
&=& R_{\frac{\pi}{4}} (e^{-i \frac{\pi}{4}} | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 |) \\
&=& (| 0 \rangle \langle 0 | +  e^{i \frac{\pi}{4}} | 1 \rangle \langle 1 | ) (e^{-i \frac{\pi}{4}} | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 |) \\
&=& e^{-i \frac{\pi}{4}}| 0 \rangle \langle 1 | + e^{i \frac{\pi}{4}}| 1 \rangle \langle 0 | \\
&=& e^{-i \frac{\pi}{4}}|( | 0 \rangle \langle 1 | + e^{i \frac{\pi}{2}}| 1 \rangle \langle 0 | ) \\
&=& e^{-i \frac{\pi}{4}}( | 0 \rangle \langle 0 | + e^{i \frac{\pi}{2}}| 1 \rangle \langle 1 | )( | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 | ) \\
&=&  e^{-i \frac{\pi}{4} } R_{\frac{\pi}{2}} X
 \end{eqnarray*}
となり示された。*1

他についても同様。

 R_{\frac{\pi}{4}} は共役作用 R_{\frac{\pi}{4}} ( \cdot ) R^{\dagger}_{\frac{\pi}{4}} の下でパウリ行列をパウリ行列に移さないので、
即ちクリフォード演算子ではない。
クリフォード演算子かどうかは、ぱっとみてわかるようなものではなさそうですね。

今回はここまで。

*1:途中の式変形が少し難しい。

量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part9

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今回はpp.39- です。

pp.39.2 クリフォード演算子



 \begin{eqnarray*}
 &(&1) HXH = Z, HYH = -Y, HZH = X \\
 &(&2) R_{\frac{\pi}{2}}XR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = Y,  R_{\frac{\pi}{2}}YR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = -X, R_{\frac{\pi}{2}}ZR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = Z \\
 &(&3) CZ( X \otimes I ) CZ = X \otimes Z, CZ( Y \otimes I ) CZ = Y \otimes Z, CZ( Z \otimes I ) CZ = Z \otimes I
 \end{eqnarray*}
を示せ。
ここに

 \begin{eqnarray*}
H &=& \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 | - | 1 \rangle \langle 1 | ) \\
 X &=& | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | \\
 Y &=& i | 1 \rangle \langle 0 | -i  | 0 \rangle \langle 1 | \\
 Z &=& | 0 \rangle \langle 0 | -  | 1 \rangle \langle 1 | \\
 R_{\frac{\pi}{2}} &=&  | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{j \frac{\pi}{2}} | 1 \rangle \langle 1 |  \\
CZ &=&  | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I +  | 1 \rangle \langle 1 | \otimes Z 
 \end{eqnarray*}
である。

  • 解答

(1) HXH = Z, HYH = -Y, HZH = X


 \begin{eqnarray*}
 H(XH) &=& H( | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | )( \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 | - | 1 \rangle \langle 1 | )  ) \\
&=& H \frac{1}{\sqrt{2}}(  | 1 \rangle \langle 0 | + | 1 \rangle \langle 1 | + | 0 \rangle \langle 0 | - | 0 \rangle \langle 1 |  ) \\
&=&  \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 | - | 1 \rangle \langle 1 | ) \frac{1}{\sqrt{2}}(  | 1 \rangle \langle 0 | + | 1 \rangle \langle 1 | + | 0 \rangle \langle 0 | - | 0 \rangle \langle 1 |  ) \\
&=& \frac{1}{2}(  2| 0 \rangle \langle 0 | - 2| 1 \rangle \langle 1 |) \\
&=& Z    
 \end{eqnarray*}
となり示された。他についても同様である。

(2)  R_{\frac{\pi}{2}}XR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = Y,  R_{\frac{\pi}{2}}YR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = -X, R_{\frac{\pi}{2}}ZR^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} = Z


 \begin{eqnarray*}
 R(XR) &=& R( ( | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 |)( | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{-j \frac{\pi}{2}} | 1 \rangle \langle 1 |  ) )\\
&=& R( | 1 \rangle \langle 0 | +  +  e^{-j \frac{\pi}{2}} | 0 \rangle \langle 1 |  ) \\
&=&  ( | 0 \rangle \langle 0 | +  e^{j \frac{\pi}{2}} | 1 \rangle \langle 1 | )( | 1 \rangle \langle 0 | +  +  e^{-j \frac{\pi}{2}} | 0 \rangle \langle 1 |  ) \\
&=& -i  | 0 \rangle \langle 1 | +  i | 1 \rangle \langle 0 | = Y
 \end{eqnarray*}
となり示された。他についても同様である。

(3)  CZ( X \otimes I ) CZ = X \otimes Z, CZ( Y \otimes I ) CZ = Y \otimes Z, CZ( Z \otimes I ) CZ = Z \otimes I

 \begin{eqnarray*}
CZ(( X \otimes I ) CZ)  &=& CZ ( X \otimes I) ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I +  | 1 \rangle \langle 1 | \otimes Z ) \\
&=& CZ( X | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + X | 1 \rangle \langle 1 | \otimes Z  ) \\
&=& CZ ( | 1 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 0 \rangle \langle 1 | \otimes Z ) \\
&=& (| 0 \rangle \langle 0 | \otimes I +  | 1 \rangle \langle 1 | \otimes Z ) ( | 1 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 0 \rangle \langle 1 | \otimes Z ) \\
&=& | 0 \rangle \langle 1 | \otimes Z + | 1 \rangle \langle 0 |  \otimes Z \\
&=& X \otimes Z
 \end{eqnarray*}

となり示された。他についても同様である。

これらの確認によりH, R_{\frac{\pi}{2}}, CZ がクリフォード演算子であることが示された。
(ただし H^{\dagger} = H, CZ^{\dagger} = CZ であることを示さなければならない)

今回はここまで。

量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part8

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今回はpp.39- です。

pp.39 複素係数表示と実係数表示


複素係数表示におけるゲート \Lambda(R_{\frac{\pi}{2}}) は実係数表示においては
 T( I \otimes I \otimes H ) T (I \otimes I \otimes H ) を作用させることによりシミュレートできることを示せ。
ここで、複素係数表示(2量子ビット)は
 | \psi \rangle = \sum c_{z} | z \rangle
であり、実係数表示(2量子ビット+1量子ビット)は、 c_{z} = \alpha_{z} + j \beta_{z} として
 | \tilde{ \psi } \rangle = \sum ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | 0 \rangle + \beta_{z} | z \rangle \otimes | 1 \rangle  )
で定義される。
さらに Tはトフォリゲート(CCXゲート)、 \Lambda(U) はコントロールUゲート、HはHadamrdゲートであり

 \begin{eqnarray*}
 T &=& ( I ^{\otimes 2} - | 11 \rangle \langle 11 | ) \otimes I +  | 11 \rangle \langle 11 | \otimes X \\
 \Lambda(U) &=& | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I +  | 1 \rangle \langle 1 | \otimes U \\
H &=& \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | + | 1 \rangle \langle 0 | - | 1 \rangle \langle 1 | )
 \end{eqnarray*}
である。

  • 解答

まず Hについて

 \begin{eqnarray*}
 H | 0 \rangle = \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle + | 1 \rangle ) \\
 H | 1 \rangle = \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle - | 1 \rangle ) \\
 \end{eqnarray*}
により、

 \begin{eqnarray*}
  | + \rangle \equiv \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle + | 1 \rangle ) \\
  | - \rangle \equiv \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle - | 1 \rangle ) \\
 \end{eqnarray*}
と定義する。


 \begin{eqnarray*}
 | \tilde{ \psi } \rangle &=& \sum ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | 0 \rangle + \beta_{z} | z \rangle \otimes | 1 \rangle  ) \\
 (I \otimes I \otimes H )| \tilde{ \psi } \rangle &=& \sum ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | + \rangle + \beta_{z} | z \rangle \otimes | - \rangle  ) \\
 T(I \otimes I \otimes H )| \tilde{ \psi } \rangle &=& ( \alpha_{11} | 11 \rangle \otimes X | + \rangle  +  \beta_{11} | 11 \rangle \otimes X | - \rangle ) + \sum_{z \neq 11} ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | + \rangle +  \beta_{z} | z \rangle \otimes | - \rangle  ) \\
 \end{eqnarray*}

ここで

 \begin{eqnarray*}
 X | + \rangle &=& | + \rangle \\
 X | - \rangle &=& - | - \rangle \\
 \end{eqnarray*}

よって、

 \begin{eqnarray*}
 T(I \otimes I \otimes H )| \tilde{ \psi } \rangle &=& ( \alpha_{11} | 11 \rangle \otimes  | + \rangle  -  \beta_{11} | 11 \rangle \otimes  | - \rangle ) + \sum_{z \neq 11} ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | + \rangle +  \beta_{z} | z \rangle \otimes | - \rangle  ) \\
 \end{eqnarray*}
となる。

ここで、

 \begin{eqnarray*}
 H | + \rangle &=& | 0 \rangle \\
 H | - \rangle &=& | 1 \rangle \\
 \end{eqnarray*}

よって

 \begin{eqnarray*}
 (I \otimes I \otimes H )T(I \otimes I \otimes H )| \tilde{ \psi } \rangle &=& ( \alpha_{11} | 11 \rangle \otimes  | 0 \rangle  -  \beta_{11} | 11 \rangle \otimes  | 1 \rangle ) + \sum_{z \neq 11} ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | 0 \rangle +  \beta_{z} | z \rangle \otimes | 1 \rangle  ) \\
 \end{eqnarray*}

最後に Tを作用させると、

 \begin{eqnarray*}
 T(I \otimes I \otimes H )T(I \otimes I \otimes H )| \tilde{ \psi } \rangle &=& ( \alpha_{11} | 11 \rangle \otimes  | 1 \rangle  -  \beta_{11} | 11 \rangle \otimes  | 0 \rangle ) + \sum_{z \neq 11} ( \alpha_{z} | z \rangle \otimes | 0 \rangle +  \beta_{z} | z \rangle \otimes | 1 \rangle  ) \\
 \end{eqnarray*}
元の状態 | \tilde{\psi} \rangle と比較すると、 z = 11に相当する量子状態(制御ビットが1かつ標的ビットが1)の項だけが  \alpha_{z} + j \beta_{z} \rightarrow_{( \times j )} - \beta_{z} + j \alpha_{z}  \pi/2回転した状態に移されている。
すなわち複素数表示において  \Lambda (R_{\frac{\pi}{2}}) ゲートを作用させたことに他ならない。
*1

今回はここまで。

*1:回転ゲート Rは、 |1 \rangle のみを回転させるゲートであることに注意しよう。 その制御ゲートversionなので、制御ビットが1のときだけ Rが作用することになる。 結果として | 11 \rangle だけが回転する。

量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part7

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今回はpp.38- です。

pp.38 Hadamardテスト

f:id:phymath1991:20190113185722p:plain:w300
Hadamardテスト

一番上の量子ビットを測定した時に0が得られる確率は

 \begin{eqnarray*}
 \frac{2+ \langle \psi | U | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle }{4}
 \end{eqnarray*}
であることを示せ。
ただし

H = \frac{1}{\sqrt{2}} ( | 0 \rangle \langle 0 | + | 1 \rangle \langle 0 |  + | 0 \rangle \langle 1 |  - | 1 \rangle \langle 1 | )

  • 解答

ゲートを左から順に U_{1}, U_{2}, U_{3}とおく。

 \begin{eqnarray*}
U_{1} &=& H \\
U_{2} &=& | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 1 \rangle \langle 1 | \otimes U \\
U_{3} &=& H  \\
 \end{eqnarray*}

初期状態は  | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle です。

 \begin{eqnarray*}
 U_{1} ( | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle ) &=& \frac{1}{\sqrt{2}}( | 0 \rangle +  | 1 \rangle ) \otimes | \psi \rangle \\
 U_{1}U_{2} ( | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle ) &=& ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 1 \rangle \langle 1 | \otimes U)  \frac{1}{\sqrt{2}}( | 0 \rangle +  | 1 \rangle ) \otimes | \psi \rangle \\
&=&   \frac{1}{\sqrt{2}}( | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle +  | 1 \rangle \otimes U | \psi \rangle) \\
 U_{1}U_{2}U_{3} ( | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle ) &=&  \frac{1}{2}( | 0 \rangle \otimes | \psi \rangle +  | 1 \rangle \otimes | \psi \rangle  +  | 0 \rangle \otimes U | \psi \rangle -  | 1 \rangle \otimes U | \psi \rangle)
 \end{eqnarray*}
これがゲート通過後の量子状態 | \psi_{out} \rangle である。第一量子ビットが0である確率 p_{0}は、

p_{0} = | ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I ) | \psi_{out} \rangle |^{2}
である。
*1


 \begin{eqnarray*}
p_{0} &=& | | \psi \rangle + U | \psi \rangle | ^{2} \frac{1}{4} \\
&=& ( \langle \psi | + \langle \psi | U^{\dagger} )( | \psi \rangle + U| \psi \rangle ) \frac{1}{4} \\
&=& ( \langle \psi | \psi \rangle +  \langle \psi | U | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} U | \psi \rangle  )  \frac{1}{4} \\
&=&  ( \langle \psi | \psi \rangle +  \langle \psi | U | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle +  \langle \psi  | \psi \rangle  )  \frac{1}{4} \\ 
&=&  (1 +  \langle \psi | U | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle +  1  )  \frac{1}{4} \\
&=&  (2 +  \langle \psi | U | \psi \rangle +  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle)  \frac{1}{4} 
 \end{eqnarray*}
となり、示された。


なお第一量子ビットが1である確率 p_{1}

 \begin{eqnarray*}
p_{1} &=&  | ( | 1 \rangle \langle 1 | \otimes I ) | \psi_{out} \rangle |^{2} \\
&=& | | \psi \rangle - U | \psi \rangle | ^{2} \frac{1}{4} \\
&=& ( \langle \psi | - \langle \psi | U^{\dagger} )( | \psi \rangle - U| \psi \rangle ) \frac{1}{4} \\
&=&  ( \langle \psi | \psi \rangle -  \langle \psi | U | \psi \rangle -  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle +  \langle \psi  | \psi \rangle  )  \frac{1}{4} \\ 
&=&  (2 -  \langle \psi | U | \psi \rangle -  \langle \psi | U^{\dagger} | \psi \rangle)  \frac{1}{4} 
 \end{eqnarray*}
すなわち p_{0} + p_{1} = 1 が確認できる。

今回はここまで。

*1:ちなみに第一量子ビットが1である確率 p_{1}
p_{1} = | ( | 1 \rangle \langle 1 | \otimes I ) | \psi_{out} \rangle |^{2}
であるし、 第一および第二量子ビットが同時に1である確率 p_{11}
p_{11} = | ( | 1 \rangle \langle 1 | \otimes | 1 \rangle \langle 1 | ) | \psi_{out} \rangle |^{2}
である。

量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part6

こんにちは。Kumaです。

最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
f:id:phymath1991:20181224165540p:plain
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社

本書の勉強会が大阪で開催されているそうです。
演習問題の解答も一部公開中です。(私の我流よりも少し見通しの良い解き方になっていますね)
大阪近郊の方はぜひ参加してみてください。
sites.google.com


今回はpp.37- です。

pp.37.2 CCZゲート


CCZは以下の回路と等価であることを示せ。

f:id:phymath1991:20190113105807p:plain
回路図
ここで R_{\theta}は回転演算である。

R_{\theta} 
=
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & e^{j \theta}
\end{pmatrix}
=
 | 0 \rangle \langle 0 |  + e^{j \theta} | 1 \rangle \langle 1 |
なおCCZとは3bit量子ビット演算であり、2つの制御ビットが共に1であるときに限り標的ビットにZを作用させる。

CCZ = ( I ^{\otimes ^{2}} - | 11 \rangle \langle 11 | ) \otimes I + | 11 \rangle \langle 11 | \otimes Z

  • 解答

回路図のゲート演算を左から順に U_{1}, U_{2}, U_{3}, U_{4}, U_{5} とする。

 \begin{eqnarray*}
U_{1} &=& I \otimes ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 1 \rangle \langle 1 | \otimes R_{\frac{\pi}{2}} \\
U_{2} &=& ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 1 \rangle \langle 1 | \otimes X | \otimes I \\
U_{3} &=& I \otimes ( | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I + | 1 \rangle \langle 1 | \otimes R^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}}  \\
U_{4} &=& U_{2} \\
U_{5} &=& | 0 \rangle \langle 0 | \otimes I \otimes I+ | 1 \rangle \langle 1 | \otimes I \otimes R_{\frac{\pi}{2}} \\
 \end{eqnarray*}
あとは U_{4}U_{5}, U_{3}(U_{4}U_{5}),...と順に計算して U_{1}U_{2}U_{3}U_{4}U_{5}を得ればよい。

式変形の過程で次の性質を使うと便利です。

 \begin{eqnarray*}
  | 0 \rangle \langle 0 | X &=&  | 0 \rangle \langle 0 | (  | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | ) =  | 0 \rangle \langle 1 | \\
  | 1 \rangle \langle 1 | X &=&  | 1 \rangle \langle 0 | \\
  X | 0 \rangle \langle 1 | &=& ( | 1 \rangle \langle 0 | +  | 0 \rangle \langle 1 | ) | 0 \rangle \langle 1 | =  | 1 \rangle \langle 1 | \\
  X | 1 \rangle \langle 0 | &=&  | 0 \rangle \langle 0 | \\
  R^{\dagger}_{\frac{\pi}{2}} R_{\frac{\pi}{2}} &=& I \\
  R_{\frac{\pi}{2}} R_{\frac{\pi}{2}} &=& Z
 \end{eqnarray*}

今回はここまで。