量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part7
こんにちは。Kumaです。
最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
本書の勉強会が大阪で開催されているそうです。
演習問題の解答も一部公開中です。(私の我流よりも少し見通しの良い解き方になっていますね)
大阪近郊の方はぜひ参加してみてください。
sites.google.com
今回はpp.38- です。
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part6
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量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
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今回はpp.37- です。
pp.37.2 CCZゲート
CCZは以下の回路と等価であることを示せ。ここでは回転演算である。
なおCCZとは3bit量子ビット演算であり、2つの制御ビットが共に1であるときに限り標的ビットにZを作用させる。
- 解答
回路図のゲート演算を左から順にとする。
あとはと順に計算してを得ればよい。
式変形の過程で次の性質を使うと便利です。
今回はここまで。
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part5
こんにちは。Kumaです。
最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
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今回はpp.37- です。
pp.37.1 CZゲートの対称性
1.CZゲートの対称性(制御ビットと標的ビットを入れ替えても同じ)を示せ
を示せ。*1
2.CNOT→制御ビットと標的ビットを入れ替えたCNOT→CNOTがSWAPゲート(ビットの入れ替え)
になっていることを示せ.
- 解答
1. CZゲートは
とかける。
すなわち対称性を示せとは、
を示せということである。
これを示すには、
を使う。
やっていこう。
よって示された。
2. CNOTゲートは
とかける。
制御ビットと標的ビットを入れ替えたCNOTは
である。
よって
このゲートはSWAPゲートになっている。実際にを作用させてみると、
となるので、確かにbitが入れ替わっています!
今回はここまで。
*1:ただしこのような対称性は一般には成り立たない。CZゲートの特徴である。(特徴付けであるかは不明)
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part4
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最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
今回はpp.35- です。
pp.35.1 {X,Y,Z,I}ゲート演算の性質
ゲート演算 について
1.
を示せ。
2. について固有値および固有ベクトルを求めよ。
3. 量子ビットパウリ演算子を次式で定義する。
このときは掛け算について群をなすことを示せ.
ただしは以下で定義されている.
さらに
を満たす。(この式は成分計算で示せる)
- 解答
1.1,1.2は行列の成分計算で示せる。(簡単なので流石に省略)
2 を示す。
例えばについては固有値方程式 を解くと固有値が得られる。
が得られる。
固有ベクトルは各について存在する。
については
を解けば良い。
を得るので、固有ベクトルは
である。
同様に、
についても同様に計算する。
について、
について、
3. について、示す。*1
群であるためには以下を満たす必要がある。
3.1 積について閉じている
3.2 単位元が存在する
3.3 逆元が存在する
3.4 結合法則
これらを確認すれば良いのである。
また、量子ビットの演算子は1量子ビットのテンソル積なので、1量子ビットについて示せば(各量子ビットは独立なのだから)十分である。
3.1
の中から任意の2つを選んできて積を作ったときに、
それがまたの要素であることを示せば良い。
これは1.により明らか。
3.3
各について、これに掛けると単位元(単位行列)になるものを見つければ良い。
1.の結果により なのだから、の逆元はX自身である。
同様にの逆元も自分自身である。
3.4
結合法則は、行列表示が結合法則を持っていることから従う。
以上により群をなしていることが示された。
補足
は実は極めて重要な性質である。
とおく。行列のカッコ積[ , ]を で(非可換性として)定義する。上記の性質は
と表現できる。ここではエディントンのイプシロンあるいはレビチビタの記号と呼ばれる。
エディントンのイプシロン - Wikipedia
カッコ積が入っていて、かつこのような性質を満たすたちから成る代数はリー代数と呼ばれる。
パウリ行列 - Wikipedia
リー代数 - Wikipedia
リー代数については過去記事でも紹介しています。
他のリー代数については、例えばベクトルの外積があります。
三次元ベクトルからなる集合に、カッコ積をベクトルの外積として定義します。
(基底ベクトルをとします。)
すると、などベクトルの外積の性質から
と書けます。
外積に隠れていたリー代数が見つかりました!
今回はここまで。
*1:そもそも本書では、ここの”掛け算”の定義が示されていない点は不十分と思う。(掛け算 は行列表現における行列積で定義されているのである) また、”群”の説明がない点も不親切である。
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part3
こんにちは。Kumaです。
最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
今回はpp.25- です。
pp.25.1 複素確率ベクトルの保存
ならば
状態遷移の前後で
- 解答
とおく。この複素ベクトルのノルムが1であることを示せば、直交性から
係数の二乗和も1といえる。
以下でノルムを計算する。
ここで
の条件を使うと、
よって示された。
pp.27.1 測定の性質
- 解答
1.
であるから、代入して
2.
なので、分母と分子で約分すればよい。
3.
第一量子ビットが0であるものと1であるものにわける。
この表式を使うと
よって
よって示された。
4.
分子は 3. の途中で示したとおり明らか。
分母は③の題意そのものであるからすでに示した。
よって4.が証明できた。
今回はここまで。
次回からついに量子ゲート演算が本格的に登場します。
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part2
こんにちは。Kumaです。
最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
二章はチューリングマシンから始まりますが、あまり詳しくないのでpp.15- (古典的確率状態)から書いていきます。
今回はpp.19- です。
pp.19.2 確率行列
1. 今日晴れなら、明日晴れる確率は1/2,曇りの確率は1/2
2. 今日曇りなら、明日晴れる確率は1/3,雨の確率は2/3
3. 今日雨なら、明日曇りの確率は1/4,雨の確率は3/4
を表す3x3確率行列を書け
- 解答
晴れ、曇り、雨を以下のように定義する。
pp19.1の演習問題から、題意を満たす確率遷移Hは
これを行列表現すればよい。
例えば、
である。このようにして計算するとただちに
を得る。*1
量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part1.1
こんにちは。Kumaです。
最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本も参考に、コントロールゲート(トフォリゲート含む)を直感的に理解してみます。
量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社
二量子ビットのコントロールNOTゲート
コントロールNOTゲート、あるいは制御NOTゲートとは二量子ビットの系
に対して
すなわち、
です。
CNOTは次のようにかけます。
この記事では、これを納得しましょう!
演算子表現に納得するには
は一見よくわからない表式にみえます。
これを納得するには、自分で作ってみればよいです。
まず制御bitが0か1かで動作が変わるのだから、制御ビットの情報をなんとかして抜く必要がありますね。
それには 、制御bitについてとの内積を取ればいいのです。
直交性から、制御bitがのときには0, のときには1が得られます。
しかしというのはベクトルであって、演算子ではありません。
演算子であるためには、 のようにする必要があります。
これは方向への射影演算子と呼ばれるものです。
これで、制御bitがのときには0, のときには が得られます。
制御bitの0/1に応じて、標的bitのほうにはNOTを作用させたりさせなかったりするのだから、NOTとテンソル積をとってみます。
としてみましょう。
作用は、
となりました。おお!うまくいっていますね!
でも実はまだ今ひとつです。制御bitが0だと
となるので状態が消えてしまいました。制御bitの直交性を利用して作ったので当然そうなります。
どうすればいいでしょうか。制御bitが0のときは入力がそのまま出てきてほしいので、
と のテンソル積を取るとよいでしょう。
これをさっきのやつに足してみると
です。作用をみてみると、
よって、制御bitが0のときにちゃんと入力がそのまま出てくるようになりました。
制御bitが1のときの動作も変わりないでしょうか?確かめてみましょう。
変わりなくうまくいっていますね!
制御bitが1のときと0のときの動作を独立に考えて、それを足しただけなのにうまくいきました*1
この表式こそ、理解したかったCNOTの表式そのものですね!
三量子ビットのコントロールNOTゲート
三量子ビットのコントロールNOTも、楽勝で作れます。
まず制御bitが1つで、標的bitが2つの場合を考えますと、
となることが容易に予想できるでしょう。
制御bitが1つで標的bitが1つ(真ん中のbitとします)、最後のbitは何も関与しない場合*2は
です。
少しむずかしいのは制御bitが2つのパターンです。ここで制御bitは左側の2bitとします。
両方の制御bitが1のときだけ標的bitを反転させる場合を作ってみましょう。 への射影を考えるのがポイントです。
ふむふむ。これはよくみると納得できると思います。
しかし更に、これは別の表現もできます。ここがポイント。
何が起こったのかわからないみなさん、大丈夫です。私も一見わかりませんでした!
ここは射影演算子の「完全性」と呼ばれる性質を使いました。それは、以下の関係式です。
1量子ビット系では
2量子ビット系では
です。直感的には「量子状態を各基底に射影して分解したあとに全部足し合わせると元に戻るので、射影演算子の和は恒等演算子といえる」
完全性を適応すると、先程の変な表式もすぐわかると思います!
ちなみにこれがトフォリゲートでした。