(番外編)偏波の基礎
こんにちは。Kumaです。
この記事では偏波の基礎を説明します。
この内容はあとあと、これまで書いてきたパウリ行列のお話とリンクしますので
紹介したかったのです。
偏波とはなにか
世の中の波動には縦波と横波が存在します。
- 縦波
媒質の振動方向が波動の進行方向と一致する(平行である)もの。
- 横波、偏波
媒質の振動方向が波動の進行方向と直交するもの。*1
例えば音波は縦波であり、電磁波は横波です。*2
電磁波を考えましょう。横波だということは、波動の進行方向をz軸方向としたときに
媒質の振動はx方向とy方向があるということです。
これをx方向の成分とy方向の成分をもつベクトルで表しましょう。
波動というのは媒質の振動がz方向に”伝わっていく”現象ですから、一般に観測地点と観測時刻の関数です。
いま、観測地点は固定しましょう。そして時間変化は正弦波的であると仮定します。*3
すなわち、
とします。
いま、を変化させたときに
ベクトルの軌跡を考えることができます。これは何らかの曲線だろうと思われます。
この曲線を波動ベクトルの偏波状態といいます。
図でイメージすると、以下のような感じです。
偏光 - Wikipedia
z軸方向から眺めたときの”かたち”と表現する人もいますが、その意味は明らかですね。
偏波の分類
偏波とは、つまるところtで媒介変数表示された
の軌跡でした。軌跡は”振幅”であるの相対関係と”位相”であるの相対関係で決まります。
たとえば簡単な例として位相差がない場合はです。
この場合、は軌跡においてただの初期位相なので無視しましょう。
これは
方向の線分に沿って振動しているだけです。このようなものを直線偏光といいます。線分の方向はの比に依存します。
次にの比が1で逆に位相が90度違うものを考えてみましょう。sinのかわりにcosにすればよいです。
これは円の方程式ですね。
このようなものを円偏光といいます。
時計回りと反時計回りが作れます。
さて、一般の偏光の軌跡はどんなものになりそうでしょうか?
少し考えてみるとわかりますが、一般には楕円を描きます。
desmosでシミュレータを作ってみました。
sとRを変えるといろいろな軌跡ができます。しかしそのいずれも楕円(と円、直線)にしかならないことがわかりますね。
www.desmos.com
話はこれで終わらない。
偏光とはベクトルの軌跡でした。さて、この軌跡はベクトルと【一対一に】対応しているでしょうか。
一見、対応していそうに思えます。
しかし、それは正しくないのです。
直線偏光に対応するようなベクトルは実は2つあるのです。
と
です。これらはベクトルの軌跡の”初期位置”が違うだけで、描く軌跡だけをみると区別できません。
一方で、 の片方だけにマイナスをつけたものは、描く直線が異なるのでこれとは区別できます。
つまり直線偏光は、ベクトルと偏光が【2対1で】対応するのです。
一般の偏光に対してはどうでしょうか?このような”縮退したペア”は存在するでしょうか?
難しくなってきました。
今回はここまでにしましょう!