量子計算理論(森前 著) の演習問題を解く part11

こんにちは。Kumaです。

最近、量子コンピュータについて勉強しています。
今回は有名な以下の本の演習問題について、解答が載っていないので一部書いてみたいとおもいます。
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量子計算理論 量子コンピュータの原理 | 森北出版株式会社

本書の勉強会が大阪で開催されているそうです。
演習問題の解答も一部公開中です。(私の我流よりも少し見通しの良い解き方になっていますね)
大阪近郊の方はぜひ参加してみてください。
sites.google.com


今回はpp.41- です。

pp.41-1,2,3,4 ユニバーサル量子計算(解答募集中...)

pp.42-1 混合状態



 \begin{eqnarray*}
 &\rho& \equiv \sum \lambda_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | \\
 &\lambda_{i}& \geq 0 \\
 &\sum& \lambda_{i} = 1
 \end{eqnarray*}
はトレース1の非負エルミート演算子であることを示せ。
を示せ。
ここに、エルミートであるとは  A^{\dagger} = Aである。
また非負であるとは固有値のすべてが非負であることをいう。

  • 解答

1. エルミート性


 \begin{eqnarray*}
 \rho^{\dagger} &=& \sum \lambda^{*}_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | 
 \end{eqnarray*}
ここで \lambda_{i}は実数であるから、 \lambda^{*}_{i} = \lambda_{i} よって  \rho^{\dagger} = \rho

2. 非負であること

qiita.com

を参考に。

 \rho固有ベクトル | \psi \rangle 、対応する固有値 aとおく。固有ベクトルは規格化されているとする。

 \begin{eqnarray*}
 a &=& a \langle \psi | \psi \rangle \\
 &=& \langle \psi | a | \psi \rangle \\
&=& \langle \psi | \rho | \psi \rangle \\
&=& \langle \psi | (\sum \lambda^{*}_{i} | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | )| \psi \rangle \\
&=& \sum \lambda_{i} \langle \psi | \phi_{i} \rangle \langle \phi_{i} | \psi \rangle \\
&=&  \sum \lambda_{i} | \langle \psi | \phi_{i} \rangle | ^{2} \\
&\geq& 0
 \end{eqnarray*}
となり示された。

注意点

  • 混合状態と純粋状態の違い

純粋状態の場合は直交する状態の量子的な(複素係数の)重ね合わせであった。
しかし混合状態の場合は、任意の状態の確率的な(非負実数係数の)和である。
すなわち混合状態の定義に出てくる  | \phi_{i} \rangle たちは一般に直交する状態とは限らない。
*1
例えば、  | 0 \rangle,  | 1 \rangle, | + \rangle, | - \rangle を等確率で混合した状態を考えても良い。
 \rho = \frac{1}{4} | 0 \rangle \langle 0 | + \frac{1}{4}  | 1 \rangle \langle 1 |  + \frac{1}{4}  | + \rangle \langle + |  + \frac{1}{4}  | - \rangle \langle - |

混合状態 は 散々注意したように 重ね合わせ とは異なる。混合状態において、実は状態は  | 0 \rangle,  | 1 \rangle, | + \rangle, | - \rangle のどれか1つに確定しているのであるが、情報不足によって我々はどの状態であるかを「知らない」(あるいは「実用上知ることが著しく困難であり、統計的に扱うほかに手がない」)だけである。

  • 混合状態がなぜ必要か

例えばアボガドロ数程度の粒子の古典的な力学系を考えよう。
このとき、確かに個々の粒子の位置,運動量,その後の時間発展などはニュートン力学だけで決定的である。
しかし粒子同士の相互作用を含めてこれを計算したり測定することは極めて難しい。*2
そのため、実用的にはXXのパラメータを持つ粒子が平均でYY%存在する として、粒子全体に渡る平均(期待値)を追いかける他にない。
(これが量子力学的な重ね合わせ状態なんて意味していないことは明らかである)
これが古典統計力学のアイデアであり、混合状態はまさにこのような事情で必要とされる。(と私は理解している)

今回はここまで。

*1:ただし  \rho はエルミート演算子であることから、(一般には | \phi_{i} \rangleとは異なる) 直交する固有ベクトル | \psi_{i} \rangle を持つ。 この固有ベクトルを用いて改めて分解することは可能である。  \rho =  \sum \Lambda_{i} | \psi_{i} \rangle \langle \psi_{i} | (スペクトル分解)

*2:そして、これが出来たとしても系についてなにか わかった とは到底思えないわけである