機械学習とボルテラ級数展開の関係

どうも、Kumaです。

最近、ニューラルネットワーク(以下、NN)に少し触れる機会があります。

そこで少し気づいたことについて紹介します。

NNは(かなり多様な)非線形フィルタを実現できるとされています。

しかし非線形フィルタはこれまでもずっと研究されてきています。
有名なものとしては、ボルテラ級数があります。これは二変数の畳込みフィルタです。すなわち、1変数の畳込みを

 \displaystyle y(n) = \sum_{i} h(i)x(n-i)

とするとき、二次のボルテラ級数とは二次の畳み込みであって

 \displaystyle y(n) = \sum_{i,j} h(i,j)x(n-i)x(n-j)

となります。N次も同様に定義できます。

ボルテラ級数は、次数を増やしていけば、(計算量を別にすれば[1])かなり広い非線形システムを近似できそうです![2]

さて、ボルテラ級数というクラシカルな方法と、NNのような新しい方法は無関係な技術なのでしょうか?
私にはそうは思えません。両者はかなり似た計算をしています。

調べてみたところ、先行研究がありました。
今回の記事の目的はこれを紹介したかったということです。

[計 測 自 動 制 御 学 会 論 文 集 Vol.31,No.9,1408/1415(1995) ] ニ ュニ ラ ル ネ ッ トワ ー ク のVolterra核 推 定 と構 造 同 定 へ の 応 用 横 山 誠・ 多 氣 昌 生 渡 辺 敦・ 高 橋 治 文

www.jstage.jst.go.jp -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
そこで本論 では,ま ずVolterra級 数モデル のパ ラメトリゼー ションか ら出発 し,ANNを 含 んだ非線形モ デルを導入す る.
そ して,本 モデルの特別なモデルが,現在 広 く用 い られ ているANNを 含 んだモデルの特 別 な場合 に相当す ることを示 す.
つ ぎに,本 モデルのANN中のパ ラメータ とVolterra核 のパ ラメータの関係 を示す.
し たが って,本 モデル によってシステムを同定 した後,ANN中 パラメータを用いることによって,容 易 に任意 のVolterra核 が算出で き,Volterra級 数 モデル が得 られるこ とが示 される.
す なわち,こ のVolterra級 数モデル を用 いることによって,学 習同定後に同定対象 の動特性 を解 析す る ことが で きる.
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つまり、NNはボルテラ級数展開の枠組みで捉えられるということになります。

すべての機械学習モデルがこの方法で書けるのかどうかは分かりません。
(たぶんそんなに簡単ではないと信じている)
また、ボルテラで書ければ全てが「わかった」と思えるわけでもありません。

ただ、工学で使われている技術が何らかの言葉でgeneralizeできるというときに、私はとてもワクワクするのでした。

それでは。

[1] Kumaの理解では、これは畳みこみの一種ですので、Fourier変換して積に落とし込むとより高速に計算できますが。

[2]しかし、一般に未知の非線形システムに対して「何次まで用意すれば十分な精度が出るのか」は既知でないことがほとんどです。 非線形性が強くない領域では摂動法も有用ですが、やはり何次まで取ればいいのかはケースバイケースです。