エルミート行列のパウリ行列展開とその座標成分(2)
こんにちは。Kumaです。
この記事はエルミート行列のパウリ行列展開とその座標成分(1)の続きです。
electrodynamics.hatenablog.com
エルミート行列のパウリ行列展開
2x2エルミート行列は、パウリ行列 と単位行列 の結合で書くことができます。
ここで はすべて実数であって次の式を満たします。
本当か?と思うので計算して確かめてみましょう!
証明
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まずtraceの中身 を計算する。
次にtraceを取ります。
よって
となり、確かに行列 に一致します。
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まとめ
という分解公式が成り立ちます。
おまけの性質
この表式
をもう少し掘ってみましょう。
両辺のtraceを考えます。
たちはトレースゼロという性質を持ち、かつtraceは線形演算でtrace(A+B)=trace(A)+trace(B)ですから
が成り立ちます。のトレースはすべて が担っています。つまりはトレースのある部分とない部分に分割されたわけですね。
さらに成分の公式
も少し掘ってみましょう。
ベクトルの場合、ある正規直交な基底ベクトルに関する成分(係数)を計算するには、そのベクトルとの内積を取れば良いのでした。
今回はまるで行列の積をとってtraceを計算することがベクトルの内積に相当するかのようです。実はこれは正しい類推です。
たとえば、たちは次の意味で”正規直交”になっています。
ここで はクロネッカーのデルタと呼ばれ、i=jのときに1, そうでない時には0を返す関数です。
”ベクトルの内積”が"行列積か~ら~の~trace"にすり替わっていると思うと、たしかにこれはベクトルの世界で言う正規直交系に相当します。
それでは!!